増殖

今日、紙コップに飲み物が注がれるタイプの自販機で、100円を投入し、
70円のココアを購入したところ、お釣りが130円返ってきた。
ボタンを押す寸前にカラカラと落ちてくる音が聞こえたが、購入も出来た。
大儲けである。
大発見である。
この方法をマスターすれば、金が金を生み、私は大金持ちになる。
貯金とかがたくさんになるのである。
見たことのない数字が通帳に記されるのである。
もう利子だけで暮らしていけるのである。
あんな物やこんな物もポンと買えるのである。
知らない親戚とかから電話が掛かってきたりもするであろう。
ある日家に帰ると4人組の男が私を待ち構えている事もあるかもしれない。
男達は私に刃物をちらつかせ「金を出せ」と脅すのだろう。
そこへCQCをマスターした屈強な元特殊部隊隊員のセキュリティー達が現れ、
拳銃、散弾銃、突撃銃、遠距離からは強力なスナイパーが狙撃銃を駆使し、
男達は一蹴されるであろう。
金を目当てに女も寄って来るに違いない。
されどそんな者には目もくれずに私は一途な愛を貫くのである。
私が年老いて病床に伏す頃には、私の前では皆心配そうにしているが、
裏では遺産を巡って血みどろの争いが繰り広げられるはずだ。
それを見越して私は遺言状に大半を自販機の会社に寄付すると書いているであろう。
そして私は安らかに永眠するのである。
そんなわけないのである。